横型マスターとラジアルマスターは、その名の通り、マスターシリンダーのピストンを押す方向が違います。ラジアルマスターはラジアル(放射状)の名のとおり、ハンドルバーに対しほぼ垂直に配置されたピストンをレバーで垂直に押します。
それに対し横型マスターはハンドルバーに対し、ほぼ水平に配置されたピストンをレバーでこじりながら押します。従って、レバーストロークと、ピストンを押すストロークが比例しておらず、また、こじるように押した結果、レバーがピストン頭を滑るように動くので、この部分が段減りします。
XR100モタードのフロントブレーキタッチがなんとなくゴリッとした感触があり、キャリパーもみ出ししても回復しないので、ここをチェックしてみた所、このとおり、グリス切れ&摩耗があります。
そこで、ピストンをラジオペンチで掴んで120°回してやって段減りした所を押さないようにしてやることで、ゴリッとした感触が改善。本来は摩耗する前にグリスアップしてやらなければならないが、こうすることで、応急処置は可能です。またゴリッとした感触が出てきても90°くらいピストン回してやれば、もう1回くらいはなんとかなりそうかな?なんかレーシック手術みたいな発想。
で、ピストンをほぼ垂直に押すラジアルマスターがなぜいいかというと、今までは、指からレバーへの入力と、レバーからピストンへの出力が同じ向きだからイイ、と思ってきました。
が、それぞれの動きをよく単体で見てみて気がついたのですが、どちらのマスターも厳密には、レバーはピストンをまっすぐには押していません。レバーは支点を中心に円運動するからです。
なので、レバー入力と、ピストンを押すストロークは、比例していませんが、両者の大きな違いは、レバー比(力点~支点距離/支点~作用点距離)にあり、ラジアルマスターはレバー比が大きい事です。
レバー比が大きいことにより、レバーストロークに対して、実際にピストンを押す部分はより小さい動きで済みますので、円弧に動く部分が少なく、近似的にまっすぐな動きでピストンを押します。従って、レバー入力とピストンを押すストロークがほぼ比例し、これに、横型マスターより小さいピストン比(キャリパー/マスター)を組み合わせ、大きなピストン比をたくさんストロークさせることで、あのコントロール性とタッチを生み出しているのだと思います。
パスカルの定理を実体験として、身をもって体験すると理解が非常に深まりますね。他にも給排気の流速でベルヌーイの定理を体験したり、運動エネルギーを摩擦で熱エネルギーに変換するブレーキとか、高校時代にこんな体験してれば、物理は相当いい点数だったかも?
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